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*報 告*

GN21セミナー:「アセアンをめぐる最近の国際関係」


2008年11月30日(日)午後1時―6時

基調報告:ファン・カン・ミン(Pham Quang Minh)教授,

     ベトナム国家大学(ハノイ)国際関係学部長・国際文化研究センター所長

コメント:片岡幸彦、GN21代表

司会・通訳(英語):幸泉哲紀、GN21副代表

通訳補助(ベトナム語):チャン・ティ・ヒエン(大阪大学大学院博士課程後期)


 ベトナム国家大学(ハノイ)国際関係学部長のミン教授を迎え、大阪難波カフェ・ド・ラ・ぺで、研究者、ジャーナリスト、市民など25名の参加を得て開催された。

セミナーでは、まずミン教授による『ベトナムから見たアセアン(ASEAN)における中国と日本の角逐』というテーマの基調報告が行われた。この報告では、冷戦終結後から1990年代にかけ、アメリカとソ連の軍事的政治的撤退に代わって登場した日本と中国の政治経済的台頭に代表されるアジアの国際関係の変化が述べられた。なかでも、最近日本と中国がアセアンへの政治的経済的影響力をめぐって微妙な対立関係にあり、特に中国は1990年代になってから急速にアセアンとの関係強化を積極的に図って来たのに対して、日本はいち早く1970年代からアセアンとの対話を始めていたにも関わらず、2005年東アジア共同体首脳会議以降は、アセアン諸国への政治的経済的関係の拡充に遅れを取っているように見える。アセアン諸国への影響力や対応について、近年両国の間に何故このような差が見られるにいたったのか。その背景には、経済的に急成長する中国にとって、アセアン諸国との貿易や道路網整備などのインフラへの投資が極めて重要な意味をもっているという事実がある。ベトナムの立場からすると、歴史的に領土や航路をめぐって争ってきた中国との関係強化に慎重にならざるを得ないのは無理からぬものがあり、この点で世論においても友好的で、信頼性をもつ国と見られている日本との関係発展をむしろ望むベトナム側の姿勢とは対照的と言える。歴史的な経済危機に見舞われているアメリカやヨーロッパとの経済関係のさらなる拡充が危ぶまれているだけに、今後中国のアジアに対する経済的影響力や政治的イニシアティブの行使はいっそう強まるものと見られ、アジアの大国としての日本との角逐はさらに続くものと考えなければならないであろう。

 次いでGN21の片岡代表がコメントを行った。まず以上のミン教授の東アジアにおける国際関係のの変化とその分析は、中国に1000年、フランスに100年支配され、そしてアメリカに10年苦しめられて来たベトナムからならではの興味深い報告であることを指摘した上で、今日のグローバル経済危機の背景となっている第二次大戦後の世界経済の展開,そしてこの危機が欧米日主導の国際経済システムの劇的な変容を意味していることを述べるとともに、日本やアセアン、また地政学的にも東アジア共同体諸国の要に位置し、特に近年実体経済の著しい成長を見ているベトナムにとって、東アジアのみならず国際社会への積極的参加と世界経済における地位の拡大の好機でもあるとの見解を示した。

 片岡代表によるコメントに引き続き、セミナー参加者からミン教授の報告に対して、数名の参加者から、アセアンにとってのメコン川地域開発の意義と課題、ミャンマーに代表されるこの地域での政治不安が経済に与える影響、ベトナムやアセアンとの関係における比較的未開発な中国南西部地域のもつ意味などについての質問が出され、ミン教授からの応答と片岡代表からの補足があった。そして締めくくりとして、中国と日本とが競合的な関係ではなく、相互補完的な関係のなかでアセアンの発展に貢献することが、東アジアにとってもベトナムにとっても重要であり、そのためにも国際的な相互理解の促進とそのための教育が重要であることを確認して、セミナーは閉会した。

 

 なおコーヒーブレイクの時間や全体討議終了後に、参加者間の名刺交換や交流が行われ、本セミナーは参加者みなさんのご理解と協力のお陰で、次に繋がる実のある知的文化的交流の場となることが出来た。この場を借りて心よりお礼を申し上げる。また会終了後に北野栄三理事主催の歓迎ディナーが、有志参加のもとで大阪縁の法善寺近くの料亭“正弁丹吾”で開かれ、ベトナム戦争時における日本の報道機関の活躍などを中心に話題の輪がさらに広がった。

                                                                   

 

 

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